2025年9月の退職代行の話題を振り返る
2025年9月は、退職代行サービスが労働市場の変革を象徴する形で注目を集めた月でした。株式会社CAREER FOCUSによる業界初の調査結果が公表され、利用者の転職成功率の高さが明らかになった一方で、Z世代のコミュニケーション課題を指摘する調査も発表されました。
また、企業側からの対抗策として新たな引き留めサービスが登場し、退職代行の普及に対する企業の対応が顕在化しました。X（旧Twitter）上では、利用者の体験談やリスク議論が活発化し、社会的な議論を喚起しました。本記事では、これらのニュースを基に、9月の主要な出来事を整理し、労働環境の今後を考察します。
退職代行に関する主なニュースと調査結果
利用者の転職成功率に関する調査
9月上旬に実施された調査では、退職代行サービスの利用者がキャリアに悪影響を及ぼすという従来の誤解が払拭されるデータが示されました。
株式会社CAREER FOCUSが2025年9月1日から10日にかけて、過去に退職代行を利用した男女400名を対象に実施したアンケートによると、利用者の95.1%が転職に成功しており、平均年収増加額は63.4万円に達しました。また、転職後に年収が増加した割合は約47%でした。
この結果は、退職代行が短期的な離職支援にとどまらず、利用者のキャリア向上に寄与している可能性を指摘しています。
Z世代のコミュニケーション実態調査
一方で、若年層の退職意向と退職代行の関係性を明らかにした調査も注目されました。PR TIMESで公開された「Z世代と上司のコミュニケーションに関する実態調査」（有効回答316名、20〜29歳の若手社会人対象）では、上司との関係性が退職の原因となった場合、64.2%が退職代行サービスの利用を検討すると回答しました。
具体的に、「積極的に利用を検討する」が16.1%、「選択肢の一つとして検討する」が43.0%を占め、Z世代の合理的思考が退職プロセスに影響を与えていることが浮き彫りとなりました。この調査は、従来の「退職は直接伝えるべき」という価値観の変化を示唆し、企業の人材マネジメントに警鐘を鳴らしています。
企業側の引き留めサービスの開始
企業側の動きとして、9月8日に広告会社「おくりバント」が「イテクレヤ」と名付けた引き留めサービスを開始しました。このサービスは、匿名アンケートを通じて社員の不満を収集し、経営陣に改善策を提案するもので、退職代行の増加に対する予防策として位置づけられています。
導入事例として、企業「JAM」では給与増額ルールの明確化やコミュニケーション改善が実現し、離職防止効果が確認されました。この取り組みは、退職代行の台頭が企業に積極的な人事改革を促している証左です。
Xプラットフォーム上の退職代行についての議論と傾向
X上では、9月を通じて退職代行に関する投稿が活発で、特に派遣社員の利用増加が目立ちました。9月13日の投稿では、派遣会社の営業担当が相談に応じないケースやパワーハラスメントが原因で退職代行依頼が増加していると指摘され、業界の構造的問題が議論されました。
また、9月30日の投稿で、弁護士の中村剛氏が退職代行利用者のデータ流出リスクを警告し、利用者の個人情報保護の重要性を強調しました。 利用者の体験談も複数見られ、「即日対応でストレスフリーに退職できた」との肯定的意見が散見された一方で、新卒者の早期離職事例も報告され、労働市場のミスマッチを反映しています。
全体として、9月の投稿数は前月比で増加傾向にあり、利用者の声がソーシャルメディアを通じて拡散されていることが確認されました。これらの議論は、退職代行が単なるツールではなく、社会的な労働権利の象徴として定着しつつあることを示しています。
退職代行サービスへの考察と今後の展望
2025年9月の動向から、退職代行サービスは利用者のキャリア支援として有効性を発揮している一方で、企業側の引き留め策の登場により、労働市場のバランスが模索されていることがわかります。
Z世代の調査結果は、コミュニケーションの質が離職率に直結することを示し、企業は上司研修やメンタルヘルス支援の強化を検討すべきです。ただし、データ流出などのリスクも指摘されており、利用者は信頼できるサービスを選択する必要があります。
今後、退職代行の普及が労働法改正や業界規制の議論を加速させる可能性が高いです。記者として、引き続きこの分野の進展を注視し、公正な報道に努めたいと思います。
