格安の退職代行は危険か?非弁行為と弁護士運営の違いをわかりやすく解説

格安の退職代行サービスとは

退職代行サービスは、労働者に代わって退職の意思を雇用主に伝えるサービスであり、特に格安の退職代行は民間企業が運営するものが一般的です。これらのサービスは、利用者が退職を直接切り出しにくい場合や、職場環境によるストレスを回避したい場合に利用されます。

格安サービスの特徴

  • 費用:1万円台から2万円程度で提供され、場合によっては2,980円(例:「退職あんしん代行」)や過去には500円といった破格の価格も存在しました。これにより、気軽に利用できる点が人気の理由です。
  • 対象者:主に20代以下の若年層が利用者の約6割を占め、就職初日での利用例も報告されています。
  • サービス内容:民間業者は基本的に「退職の意思伝達」に限定され、退職届の提出や簡単な連絡の取次ぎを行います。

格安サービスは手軽さから急速に普及していますが、価格競争の激化により、業界全体で持続可能性が問われています。市場規模は約10億円と推定され、100社以上の業者が参入する中、低価格での運営は収益性の低下を招き、事業者の撤退も頻発しています。

格安の退職代行の問題点

格安の退職代行サービスには、利用者にとって以下のような問題点が存在します。

  • サービス範囲の制限:格安業者は退職の意思伝達のみに限定され、退職日や有給休暇の取得、未払い賃金の請求などの交渉は法律上行えません。これらの行為は「非弁行為」に該当し、違法となる可能性があります。
  • 信頼性の欠如:価格を抑えるため、運営がずさんな場合があり、適切な対応が得られないリスクがあります。たとえば、インフルエンサーを起用した業者(例:「ブラックブロッカー」や「JITAI」)がサービス停止に追い込まれるケースも報告されています。
  • トラブルへの巻き込み:違法な業者を利用した場合、利用者自身は罰せられませんが、業者が非弁行為で摘発されると、警察の事情聴取に巻き込まれる可能性があります。また、交渉が不十分なために退職条件が悪化するケースも存在します。
  • 業界の過当競争:低価格化による収益性の低下から、業者の新規参入と撤退が繰り返され、サービスの質や継続性が不安定です。業界トップの「退職代行モームリ」でさえ、市場の限界を指摘しています。

これらの問題点から、格安サービスは手軽である一方、利用者が期待する結果を得られないリスクが伴います。

非弁行為についての詳細な解説

非弁行為とは

非弁行為とは、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事務(訴訟、交渉、和解、仲裁など)を行うことを指し、弁護士法第72条で明確に禁止されています。違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります(弁護士法第77条)。

この規制は、法律知識が不十分な者が介入することで、依頼者の権利が損なわれたり、トラブルが悪化したりするのを防ぐためです。

退職代行における非弁行為

退職代行サービスにおいて、以下の行為は法律事務に該当し、弁護士または弁護士法人以外の者が行うと非弁行為となります:

  • 退職条件の交渉:退職日や有給休暇の取得、退職金の支払い、未払い賃金の請求など、労働者の権利に関わる交渉。
  • 法律相談や法的対応:パワハラの慰謝料請求や損害賠償に関する話し合い。
  • 法律事務の周旋:民間業者が報酬を得て、労働組合や弁護士に法律的な問題を斡旋すること(非弁提携)。

民間業者は「使者」として退職の意思を伝える行為は可能ですが、これを超える交渉や請求は違法です。たとえば、東京弁護士会は、業者が残業代の支払い交渉を行ったケースを明確な非弁行為と指摘しています。 また、労働組合は団体交渉権に基づき一部の交渉が可能ですが、裁判での代理行為は弁護士に限定され、労働組合がこれを行うと非弁行為に該当する可能性があります。

非弁行為のリスク

  • 利用者への影響:非弁行為による交渉は無効とされる可能性があり、退職手続きがやり直しになる場合があります。また、業者が摘発されると、利用者が警察の事情聴取を受けるリスクが生じます。
  • 企業側の対応:企業は非弁行為を行う業者との交渉を拒否でき、違法な要求に応じる必要はありません。ただし、従業員の退職意思自体は有効であるため、適切な対応が求められます。
  • 業界への影響東京弁護士会は2024年11月に非弁行為に対する警告を発表し、違法業者の取り締まりを強化する姿勢を示しています。これにより、グレーな運営を行う業者は淘汰される可能性があります。

したがって、賃金や有給休暇、退職条件に関する交渉は、弁護士または弁護士法人が運営するサービス以外では違法となる点を強く認識する必要があります。

弁護士運営の退職代行のメリットと推奨理由

弁護士が運営する退職代行サービスは、法的リスクを回避し、確実な退職を実現するために推奨されます。以下はそのメリットと推奨理由です:

  • 広範な対応力:弁護士は退職の意思伝達だけでなく、退職日調整、有給休暇の取得、未払い賃金やパワハラ慰謝料の請求など、すべての法律事務を合法的に対応可能です。裁判に発展した場合も、弁護士が代理人として対応できるため、安心感があります。
  • 法的リスクの回避:弁護士運営のサービスは非弁行為の心配がなく、適法に交渉や請求を行えます。利用者がトラブルに巻き込まれるリスクが最小限に抑えられます。
  • 専門知識に基づく対応:弁護士は労働法や関連法規に精通しており、適切なアドバイスを提供します。たとえば、残業代の正確な計算や、企業側の不当な要求に対する法的対処が可能です。
  • 信頼性と実績:弁護士事務所はコンプライアンス意識が高く、ずさんな対応によるトラブルが少ないです。ベリーベスト法律事務所など、労働問題に特化した事務所は実績も豊富です。

弁護士運営の費用の目安

弁護士運営の退職代行は、格安サービス(1~2万円)に比べ費用が高めで、通常5~10万円程度かかります。ただし、複雑な交渉や法的トラブルが予想される場合、費用に見合った価値があります。初回相談が無料の事務所も多く、電話やオンラインでの対応も一般的です。

弁護士運営の推奨理由

格安の民間業者では交渉ができないため、未払い賃金や有給休暇の権利を十分に主張できないリスクがあります。また、非弁行為によるトラブルに巻き込まれる可能性も否定できません。

一方、弁護士運営のサービスは、法律に基づいた確実な対応が可能で、特に管理職や30代以上の利用者、複雑な労働問題を抱える場合に適しています。 東京弁護士会の警告を踏まえ、違法リスクを回避し、自身の権利を最大限保護するためには、弁護士に依頼することが最も安全で効果的です。

弁護士への依頼方法

  • 事務所の選定:労働問題に実績のある弁護士事務所(例:ベリーベスト法律事務所、浅野総合法律事務所など)を選択する。
  • 面談の確認:弁護士本人との面談を通じて委任契約を結び、直接対応を確認する。
  • 費用の明確化:事前に費用や追加料金の有無を確認し、予算に合う事務所を選ぶ。

結論

格安の退職代行サービスは手軽である一方、非弁行為による違法リスクやサービス範囲の制限が問題です。特に賃金や有給休暇の交渉は弁護士以外が行うと違法となるため、慎重な選択が求められます。

弁護士運営の退職代行は、費用は高いものの、法的トラブルを回避し、労働者の権利を確実に保護できるため、特に複雑な退職案件では強く推奨されます。退職を検討する際は、信頼できる弁護士に相談し、安全かつ円滑な退職を実現してください。

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