退職代行の運営形態比較(2025年8月刷新)|弁護士・労働組合・民間はどれが選ばれるか

退職代行サービスの利用は増加していますが、運営主体によって「できること」と「リスク」が大きく異なります。ここでは最新のインターネット調査(2025年8月時点)を踏まえ、弁護士運営、弁護士監修、労働組合運営、民間業者の特徴と利用動向を整理します。最後に「どの運営形態が最も使われているのか」という結論を提示します。

各運営形態の特徴と利用動向

弁護士運営

特徴:弁護士が直接対応します。退職の意思伝達だけでなく、未払い賃金や残業代の請求、退職条件の交渉、訴訟などの法的トラブルにも対応できる点が最大の強みです。法的代理権があるため、非弁行為の心配はありません。費用は一般に高めで、目安として5万円以上となるケースが多いです。

利用動向:法的対応力と信頼性を求める利用者、未払い給与やパワハラ慰謝料の請求が絡む複雑なケースで選ばれることが多いです。一方で費用負担が重いため、利用者は限定的です。

弁護士監修(民間運営+弁護士のチェック)

特徴:民間業者が運営主体で、弁護士が業務の適法性をチェックする形態です。交渉そのものは民間が行うケースが多く、実務上は「交渉不可」あるいは限定的となることがあります。料金は弁護士運営よりも安く、目安で2~3万円程度です。

利用動向:コストを抑えつつ「弁護士の目」をアピールしたい業者が増えています。利用者側から見ると安心感がある一方で、「監修」と「運営」の違いが誤解されやすく、実際の対応は民間業者と同等である場合が多い点に留意が必要です。

労働組合運営

特徴:労働組合が運営主体となるケースです。労働組合は労働組合法に基づく団体交渉権を持つため、有給消化や退職日調整など労働条件に関する交渉を合法的に行えます。費用は2~3万円程度と弁護士運営よりも安価で、交渉力とコストのバランスが良い点が特徴です。裁判対応はできないため、紛争化した場合は弁護士連携が必要になります。最近は弁護士と連携する労働組合型サービス(例:ローキ等)も出現しています。

利用動向:コストパフォーマンスと交渉力が評価され、特に若年層を中心に利用が増えています。労働組合運営の退職代行(OITOMA、モームリ、ローキ等)はWeb上の実績報告が目立っており、実際の利用が拡大しています。

民間業者(弁護士・労組と無関係なケース)

特徴:弁護士や労働組合の関与がなく、基本的に「退職の意思伝達」だけを代行するタイプです。料金は1.5~3万円と低価格の場合が多いですが、未払い賃金や和解交渉などの交渉行為を行うと非弁行為に当たる可能性があり、実務上は交渉不可となります。違法リスクやトラブル対応力の低さが課題です。

利用動向:価格重視の利用者に選ばれる傾向がありますが、非弁行為のリスク周知や運営の信頼性が問題視されるようになり、相対的に利用は減少傾向です。東京弁護士会の注意喚起(2024年11月)なども影響しています。

どの運営形態が最も使われているか(2025年時点の推定)

結論(要約)労働組合運営が最も利用されていると推定します。理由は以下のとおりです。

  • コストパフォーマンスが良い:料金が2~3万円と手頃であり、弁護士運営より安価です。
  • 交渉力がある:団体交渉権に基づく合法的な交渉が可能で、有給消化や退職日調整など実務上重要な交渉に対応できます。
  • 利用実績が目立つ:X(旧Twitter)や各種ウェブ情報で、OITOMA・モームリ・ローキなど労働組合運営の実績報告が多く見られます。投稿例として、@momuri0201 の報告では1日あたりの利用者数が多い旨の情報が流通しています。
  • 調査データの裏付け:2025年6月のマイナビキャリアリサーチLabの調査では退職代行の利用率が転職者で16.6%、とくに20代で高い利用率(18.6%)が示されており、若年層が利用しやすい選択肢として労働組合型が支持されています。

民間業者は依然選ばれるものの、非弁リスクや信頼性の問題から、労働組合運営や弁護士監修へ移行する傾向が見られます。弁護士運営は法的ニーズの高いケースで選ばれますが、費用の高さから利用率は労働組合運営に及びません。

「労働組合運営は非弁行為に該当しないのか?」──簡潔な説明

「団体交渉権に基づき、有給消化や退職日調整などの交渉が可能」とありますが、これは非弁行為に該当しないのですか?

結論として、労働組合が行う交渉は労働組合法に基づく正当な行為であり、弁護士法(非弁行為)の対象外です。ポイントを整理します。

理由と根拠

  1. 団体交渉権:労働組合は労働組合法に基づき、雇用主との労働条件に関する交渉権(団体交渉権)を有します。退職日や有給取得に関する交渉は労働条件の一部にあたり、これを行うことは合法です。
  2. 組合員としての代理:退職代行サービスにおいて、利用者は実務上その組合に加入(加入手続きが行われる)し、組合が代表して会社と交渉します。団体交渉の枠組みであれば、弁護士資格がなくても交渉の正当性が担保されます。
  3. 範囲の制限:ただし、訴訟代理や法廷での代理といった裁判手続きは弁護士の専権です。未払い賃金の訴訟など法的紛争に発展する可能性がある場合は、労働組合では対応できず、弁護士に委託する必要があります。

実務上の注意点

  • 労働組合運営であっても、名ばかりの組合や登録状態が不十分な団体が存在する可能性があります。利用前に組合の登録状況や実績を確認することが重要です。
  • 労働組合が交渉しても解決が困難な法的問題に直面した場合は、速やかに弁護士による対応が必要になります。

注意点(利用前にチェックすべきこと)

  1. 運営主体の明示:サイトや契約書に弁護士法人名・労働組合名・代表者名が明記されているか確認してください。
  2. 業務範囲の明確化:退職意思の伝達のみなのか、団体交渉・和解交渉まで行うのか、明確に書面で確認してください。
  3. 費用の内訳:基本料金・追加費用・弁護士切替時の費用など、すべて書面で明示されているか確認してください。
  4. 組合の実体確認(労働組合運営を選ぶ場合):組合登録の有無、過去の交渉実績、苦情や行政処分の履歴をチェックしてください。
  5. 弁護士運営の実績確認(弁護士を選ぶ場合):労働問題の解決実績や事例、担当弁護士の経歴を確認してください。

最後に(まとめ)

  • 最も使われているのは労働組合運営の退職代行と推定されます。理由は「低コストで交渉力があり、非弁リスクが小さい」からです。
  • 民間業者は価格面での強みはあるものの、非弁リスクやトラブル時の対処力の不足が問題視されています。
  • 弁護士運営は法的紛争が想定されるケースで最適ですが、費用が高めである点は留意が必要です。
  • 弁護士監修は「安心感」を演出しますが、監修と実務代理は別物であるため、運営実態を確認する必要があります。
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